vol.8 日陰に逃げ込めない植物の戦略 ー沖縄の抗酸化野菜ー

 食品には大きく分けて三つの役割があり、それぞれ一次機能、二次機能、三次機能という言葉で分類されています。一次機能とは、エネルギーや体をつくる栄養素を与えてくれること。二次機能とは、味や香りなどを感じさせてくれること。三次機能とは環境や異物、ストレス、加齢などといった変化に対して健康を守る方向に作用すること。
 食品の三次機能の研究がすすむにつれ、食と健康のかかわりが生活の中で強く意識されるようになってきました。健康食品も食品の三次機能の研究に伴い発展しました。
 食と健康のかかわりを考える上で最も重要なキーワードの一つに“抗酸化力”があります。紫外線や化学物質、ストレスなど様々な環境要因によっていわゆる「活性酸素」に代表されるフリーラジカルが体内に発生すると、その強い酸化力によって体の組織や細胞、遺伝子などが傷つけられ病気の原因になってしまうことがわかっています。こうしたフリーラジカルの酸化反応を中和する力のことを抗酸化力と呼びます。人の体内で生み出される抗酸化力もありますが、それだけでは十分でなく、食事から取り入れることが重要視されています。日常の食生活において、最も大きな割合を占める抗酸化力の供給源が野菜であるといっても過言ではないでしょう。

  • 沖縄で育つ野菜や果物

    写真提供:農業法人有限会社グリーンフィールド

  • 長命草は、日本最西端の島・与那国に自生する野草

    写真提供:金秀バイオ株式会社

「木ぬ下うてぃ遊ぶんど♪」と沖縄のわらべ歌「うーまくかまでー」でも唄われているように、陽ざしの強い沖縄では長時間直射日光に晒されるのは避けたいものです。しかし、地に根を張った植物は日光から逃れることができません。むしろ光合成に必要な光を求めて太陽に向かって伸びていきます。そういう植物は強い紫外線の酸化力から自分の体を守るために抗酸化物質を蓄えます。人間はそれを食べ物としていただいて、抗酸化力を体内に取り込んでいるのです。
 生活の中で抗酸化力の強さや量を計ることは難しいですが、食べ物の“色“がバランスよく抗酸化物質を摂取するための目安となり得ます。鮮やかな植物の色は抗酸化物質なのです。沖縄で育つ野菜や果物の多くが抗酸化物質によって濃く鮮やかに彩色されています。沖縄産の健康素材でよく知られている色素は紅芋やハンダマ(水前寺菜)のアントシアニン。ウコンのクルクミン。トマトのリコピンも抗酸化力にある色素です。ニンジンを彩るΒ-カロテンは濃い緑色の葉野菜にも豊富に含まれています。よく耳にするポリフェノールとは植物に含まれるある種の抗酸化物質の総称です。
 また、ビタミンC、ビタミンE、ビタミンAは抗酸化ビタミンとも呼ばれ、ビタミンとしての働きに加え、強い抗酸化力で人の健康維持を助けます。国が定めた「栄養機能食品」は抗酸化ビタミンも対象となっており、WOJ認証制度でも多くの栄養機能食品が認証されています。

(一社) 沖縄県健康産業協議会 専門コーディネーター 照屋 隆司(日本臨床栄養協会認定 NR・サプリメントアドバイザー/農学修士)