vol.6 捨てるところ無し?シークヮーサーは皮もすごい

 NHK連続ドラマ小説「ちむどんどん」(2022年4月11日~9月30日放送 主演:黒島結菜)のオープニングでは、少女が木の枝からシークヮーサーの実をもぎ取り、それをかじりながら白い砂浜へ駆け下りていくアニメーションが毎朝お茶の間に放送されました。シークワーサーが沖縄の食文化を代表する食材であることは、誰も疑うことはないでしょう。沖縄の人々は青切りシークヮーサーの強い酸味と独特な香りに古くから慣れ親しみ、ジュースにして飲んだり、そのまま食べたり、料理の風味付けに利用してきました。


今注目の“ノビレチン”
 この伝統的食材が、近年、健康食品素材として注目を浴びるようになり様々な研究が行われています。そして最近、テレビなどでよく耳にすることが増えてきたのがシークワーサーに含まれる「ノビレチン」という成分です。ノビレチンは生活習慣病や認知症との関係や、様々な健康維持に関する研究が行われてその成果が公表されています。インターネットで「ノビレチン」を検索すると実に様々な情報に触れることができます。

  • 青切りシークヮーサーの実

    写真提供:株式会社カタリスト琉球

  • シークヮーサー果樹

    写真提供:株式会社ケレス沖縄

その情報の根拠は?
 ただ、ここで一つ気をつけていただきたいのは、私たちが触れる情報がすべて本当に人の健康維持に役立つものとして証明された情報なのかどうか?ということです。例えば、ある大学ではノビレチンが認知症の記憶障害を改善する可能性があるという研究成果を公表しています。学術的に非常に重要な研究ですが、この研究はマウスを用いた研究でありヒトに対して行われたものではありません。治療薬の開発につながる物質を見つけるために、実験動物にその成分を与えたあとに解剖して組織の変化を調べる。これは人間に役立つ物質を見つけるための、研究の一過程なのです。一方、機能性表示食品や特定保健用食品に求められている健康に良いことの科学的根拠(エビデンス)とは、ヒトを対象に行われた研究成果を指します。巷に流れる情報には、試験管の中での試薬との反応、培養細胞を用いた試験、実験動物を用いた試験、ヒトを対象に行われた試験(臨床試験)などの区別が明確にされないままに、一緒くたにして書かれているものが少なくありません。


WOJ認証を取得した健康食品を
 (一社)沖縄県健康産業協議会が運営するWELLNESS OKINAWA JAPAN認証制度(WOJ認証)では、健康素材の機能性に着目して開発された商品については、ヒトを対象にした研究成果に基づいて審査が行われます。食品に機能性について表示するには国の制度に従わなければなりませんが、機能性を表示しない商品であってもその成分や素材をアピールするなら、学術雑誌に掲載された臨床試験の論文が存在するかどうか(※1)が問われます。シークヮーサー由来の成分をアピールしてWOJ認証を受けた商品は、こうした審査(※2)をパスしたものです。


シークヮーサーは丸ごとありがたい
 ところでシークワーサーに含まれる健康維持に役立つ成分はノビレチンだけではありません。果汁には多量のクエン酸が含まれていますし、ヘスペリジン(ビタミンP)という成分も含まれています。ノビレチンやヘスペリジンは機能性成分として注目されていますが、果汁よりも果皮に多く含まれます。
 シークワーサージュースがつくられる時に生じる大量の果皮を含む搾りかすは、ノビレチンやヘスペリジンを多く含む貴重な資源です。そしてこれは、沖縄ならではの健康食品に生まれ変わります。シークヮーサーは捨てるところがない、まるごとの健康食品なのです。

(※1)必ずしも自社の研究論文である必要はありません。
(※2)沖縄県健康産業協議会が独自に設置した外部有識者委員会による審査です。

(一社) 沖縄県健康産業協議会 専門コーディネーター 照屋 隆司(日本臨床栄養協会認定 NR・サプリメントアドバイザー/農学修士)