vol.5 なぜ島桑は浦添市の特産品なのか?

 WOJ認証商品26種類(令和4年11月現在)のうち6種類の商品に島桑の葉や実が利用されています。その原材料はすべて、沖縄県浦添市で開発され市内の民間企業により供給されているものです。また、沖縄県内の物産イベントなどに島桑を利用した商品が出品されると、会場に訪れた方から「浦添の桑ですよね」と声がかけられることがあります。沖縄県内においては、島桑は浦添市の特産品だという認識が広まりつつあります。

 島桑(シマグワ)とは、南西諸島に広くみられる桑の一種で、沖縄県内ではいたるところに生えています。
 一見ありふれていると思われる島桑が、なぜ浦添市の特産品なのでしょうか?
 それは浦添市が、桑の健康素材としての可能性に着目し、研究機関と連携してたくさんの研究をおこない、その成果がスイーツや料理、健康食品などをつくる市内の商工業者に活用されているからです。桑の葉や実はありふれていても、浦添市が掘り起こし蓄えた島桑に関する情報(知的財産)は浦添市固有のものです。

  • 島桑はなぜ浦添市の特産品なのか?島桑の葉

    写真提供:株式会社沖縄美健販売

  • 島桑はなぜ浦添市の特産品なのか?島桑の実

    写真提供:株式会社沖縄美健販売

 浦添市が県内外の研究機関と共同ですすめた、10年にわたる研究の成果についての詳細は浦添市からの発表を待ちたいと思いますが、ここではすでに公表されている一部の研究について触れたいと思います。浦添市と沖縄工業高等専門学校、キンザー前クリニック(浦添市内の医療機関)との共同で、健康な人を対象とした臨床試験が行われました。島桑の葉の粉末を2g摂取した後に砂糖水を飲むと、砂糖水だけを飲んだ時に比べて糖分の吸収が緩やかになる結果が得られました(※1)。さらに、島桑の葉を練りこんだパンを食べた時も、島桑が入っていない普通のパンを食べた時に比べて、パンの炭水化物が糖として吸収されるのが緩やかになったことが確認されています(※2)。これらの研究成果は、論文審査を経て学術雑誌に掲載されました。

 島桑の魅力はさらに広がります。臨床試験を実施した医学博士の島尻佳典氏と対談した、野菜ソムリエ上級プロの堀基子氏は、島桑の葉が抗酸化ビタミンであるβ‐カロテンや食物繊維、カルシウムを多く含む栄養源としても大変優れていると、野菜ソムリエそしてアンチエイジングプランナーの立場から強調しています(※3)。

 沖縄ではまた、農家の方が山羊の餌として野山に生える島桑の葉を刈り取っているのを見かけることがあります。山羊が好んで食べ、元気に育つのだそうです。浦添市の関係者に聞くと、桑の葉はウニの養殖や大型の陸ガメの餌としても重宝されているそうです。蚕の幼虫は桑の葉だけを食べながら急速に成長し、美しい絹たん白質(シルクプロテイン)を作り出します。こうした事実からも島桑のパワーが感じられます。また、島桑の実にも健康によい成分が含まれていることがわかっており、現在研究が進められています。

 島桑に着目し、市の産業としての育成に取り組む浦添市は、沖縄県内の各地から優良な島桑の木を収集し、時間をかけてこれらを掛け合わせ、浦添市だけの、誰にも真似のできない優れた島桑の木を育種してきました。その葉や実の加工技術の研究も行われてきました。これらの成果が市から民間企業に引き継がれ、市の産業として本格的に発展しようとしています。


※1 久米大祐、深水愛理沙、藏屋英介、島尻佳典、伊東昌章「シマグワ葉パウダーの血糖値上昇抑制効果」(日本食品科学工学会誌 , 66(2),52-56, 2019)
※2 久米大祐、喬 穎、中山珠里、保川清、島尻佳典、伊東昌章「シマグワ葉パウダーを配合したパンの血糖値上昇抑制効果」(日本栄養食糧学会誌 第74巻1号 p15-20, 2021)
※3 週刊レキオ Vol.1815 2020.2.20「島桑産業シンポジウム」全面広告

(一社) 沖縄県健康産業協議会 専門コーディネーター 照屋 隆司(日本臨床栄養協会認定 NR・サプリメントアドバイザー/農学修士)